かけら ほのか 前編
「やっほ〜おちび!」
そんな風に自分のことを呼ぶのはたった一人しか居ない。
引退してしばらく経つ先輩、菊丸英二。
「菊丸先輩…ちわす」
「もう、相変わらずそんな辛気臭い顔して!!もっと元気出して!」
「だって寒いんすもん…」
先輩たちが居た頃の夏の大会が少し前のことに感じるといっても、
もう十二月になった。
あと半月くらいで今年も終わり、あっという間に引退した先輩たちは中学を卒業してしまう。
そう考えると酷く落ち着かない心を誤魔化すかのように、リョーマはわざと明るく菊丸に声をかけた。
「先輩、こんな所でふらふらしてる暇あるんすか?一様受験生だってのに」
「問題無いもんね〜。頭の方は問題ないから、あと心配するのって言ったら高校の部についていけるかだけだもん。
だからそん為に俺らちゃんと自主トレしてるっての!そんなんで皆元気だよ」
手塚はそっけないこと口で言いながら凄く部のこと心配してるでしょ?
大石は普通におろおろしてる、あいつらに部を任せて大丈夫なんだろうか…って未だに言ってる。
三年一人一人の最近の様子を菊丸が挙げていく。
その中になかなかリョーマが一番気になっている人の名前が挙がってこない。
その人とは、不二周助。
不二が現役で部に居た頃から気になっていたのは確かだが、
リョーマが彼に対する想いに気が付いたのは、引退して会えなくなってからのこと。
けれど、それではあまりにも遅すぎた。
菊丸たちのように度々部室に遊びに来てくれるような人ではなかったら、そういえば引退して以来不二には会っていないかもしれない。
そんな風に、ずっと会っていないのに不二に対する想いがなくなることはなかった。
今も、そしてこれからもずっと彼のことを好きでいるんだろう。
「で…不二先輩は?」
耐え切れなくなって思わず尋ねてしまった。
変に怪しむまれたりはしないだろうか。
「不二はねえ、あいからずだよ。わが道を突っ走ってる感じ。ってかあいつ俺が一緒に部室に行こうって何回誘っても絶対来ないの!」
それって、酷くない?
その後も菊丸はリョーマに向けて色々と話しているが、リョーマの耳にそれが入ってくる事はない。
絶対部室には来ない。
それは引退してしまった今では、この部には興味がないからか。
それとも、ここに会いたくない人がいるからか。
理由は解らない、だけど自分が不二に会うことが出来ないのは確かだ。
かといって、別にショックを受けるものではないのかもしれない。
だって、引退してしまった以上不二と会う機会が少なく…なくなる事くらい解っていたから。
彼と会うことが出来るのはこの部室で、部活関係のことでだけ。
別に同じ学校なんだし、会いに行く事だって可能なのはわかっている。
だけど、リョーマにはそれが出来ない。
そうする勇気がない。
不二に自分のことを好きになって欲しいとは思わない。
だけど、彼に嫌われるのだけは嫌だ。
だからこのまま、特に話す事も、ましてはこの想いをつげることもないまま
不二が卒業していってしまってもそれは構わないと思っていた。
それから数日後
彼と偶然会うことになるまでは。
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不二リョで片思いは今まであまり書かなかったのでここへ挑戦。
リョーマの誕生日まで、という区切りであと2話ほど続きますがお付き合いくださいませv
2006.12.11